幸せの国・ブータンの交通事情とその展望





当記事は雑誌「運輸政策研究」の記事を転載したものです


1 - はじめに

ブータンはヒマラヤ山脈東端の南部に位置し北方を中国, 南方をインドの両大国に挟まれた,面積3.8万km2(九州の約 0.9倍),人口約70万人の小国である.1970年代に第4代ジク メ・センゲ・ワンチュク国王によって提唱されたGNH(Gross National Happiness),すなわち「国民総幸福」を国是として 掲げ,仏教的思想に基づき,環境に配慮した持続可能な発展 を目指す国として,今世紀に入り世界的な注目を集めている. 我が国においても,日本・ブータン国交25周年の節目であ る2011年は,第5代ジグメ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王 の結婚,国王夫妻の訪日,衆院本会議場での演説と震災犠牲 者への追悼の様子など広く報道され,衆目を集めたことは記 憶に新しい.
このような折,筆者は京都大学ブータン友好プロジェクト注1) の第7次訪問団として2011年11月23日より12月8日までブー タンを訪問する機会を得た.本稿では,筆者の狭い了見を通 してではあるが,ブータン王国の道路・交通状況の現状とその 展望について紹介したい.


2 - ブータンにおける都市間交通の現状

2.1 ブータンの近代化を進めた1本の道路
バンコク発のDruk航空の飛行機は,インドもしくはバングラ デシュの空港を経由した後,周囲を山に抱かれたパロ空港に 到着する.多くの旅行者はこの後,パロから首都ティンプーへ 自動車で向かうことになる(図─1参照).パロからチュゾムまで南下した後,そこからティンプーまで北上する道路が,ブータ ンに近代化をもたらしたブータン国道2号線である.1959年 より着工し,1962年にインドとの国境の町プンツォリンとティン プーを結ぶ国内初の自動車道として開通した.
1958年時点では徒歩で8日かかったというインド国境から ティンプーまでの道のりがわずか1日に短縮されたという1).こ れにより多くの物資がインドより流入すると共に,以降,主にイ ンドの援助により近代化が進められた.
現在,プンツォリン~ティンプー間は2005年にアジアハイウェ イ(AH48)に指定され,アジアハイウェイ規格としての拡張整備 が進められている.2008年時点では,全区間長165kmの内, 72kmがアジアハイウェイ基準IIにあたる往復2車線のアスファ ルト舗装道路として(写真─1),ティンプー近郊の6km区間で はアジアハイウェイ基準Iの片側2車線高規格道路(写真─2) として整備されている.

ブータン道路地図
図―1 ブータン道路地図 ※画像をクリックすると拡大画像がご覧いただけます 
(出典:URL: http://www.vidiani.com/?p=3202を基に筆者加筆修正 )

アジアハイウェイ
写真―1 AH48の様子(パロ~ティンプー区間)筆者撮影

アジアハイウェイ
写真―2 AH48 の様子(ティンプー近郊部)筆者撮影 中央分離帯が設置され,片側2車線の自専道として整備 されているが,路肩を歩く歩行者も散見される.

東西縦貫道の様子
写真―3 東西縦貫道の様子(サムテガン-ノブディン間)筆者撮影 舗装は劣化し,谷側のガードレールも整備されていない 様子がうかがえる.また,斜面の補強もされておらず落 石・斜面崩落の危険性も高い.

2.2 都市間道路ネットワークの現状
急峻な山岳地帯に位置するブータンにとって,ヒトの移動・モ ノの輸送には道路交通手段が必要不可欠である.しかしなが ら,ブータンの道路ネットワークは,1本の東西縦貫道(国道1号 線)に対し4本の南北道が接続するのみであり,未だ道路“網” とは言えないのが現状である.唯一の東西縦貫道にしても, 3,000mから4,000m規模の峠をいくつも越える必要があり, また,トンネル・高架道は整備されておらず曲率・勾配共に厳 しい道路線形の区間が少なくない(写真─3).筆者らのフロー ティング調査では,パロ~ティンプー間の平均速度が47.4km/h に対し,ノブディン~サムテガン間では26.9km/hと著しく低 かった.また,道路の多くは等高線に沿って建設されているた めに蛇行が著しく,地点間の直線距離に対し,道路延長は平 均でその2.5倍を要するとされている2).そのため,首都のティ ンプーから東部の町タシガンまで,直線距離にして187kmで はあるが,自動車での移動では総走行距離にして約600km, 2泊3日の行程になるという3)
また,山岳地帯では道路整備の手が届いておらず,未だ自 動車によるアクセスが不可能な集落も数多い.2005年の統 計4)によると,ブータン国内で9.7%の世帯が自動車の通行可 能な道路にアクセスするのに6時間以上の徒歩移動が必要で あることが明らかとされている.県別に見た場合,全25県の 内,6つの県ではこの割合が15%を越えている.特に,ガサ県 では69.2%,シェムガン県では43.9%と著しく高い.このよう な地域では,輸送コストが著しく高く注2),主な産業である畜 産・農産品による現金収入も乏しく,二次産業・三次産業も立 地しないため,貧困化を招いているのが現状である.それに 加え,若年世代の都市部への流出も加速しつつあり,高齢化・ 労働力不足が深刻化しつつあるという問題を抱えている.

2.3 道路ネットワークの拡張計画
このような現状もあり,ブータン第10次5ヵ年計画(2008- 2013)2)では,道路網拡充の効用を,(1)貧困の削減,(2)食料 安全保障の向上,(3)地域コミュニティの孤立の解消,(4)社会 サービスや経済活動へのアクセス可能地域の拡大,(5)二次・ 三次産業の立地促進,と明確に示し,5ヵ年で137億ニュルタ ム(約219億円)の予算を計上して精力的な道路整備が進めら れている(図─2参照). 第10次5ヵ年計画では,ブータン道路部門マスタープラン 2007-2027に基づき,道路整備に関する政策目標を以下の 通り制定している.
(1)すべてのGewog(日本における市町村に相当)の中心部 への道路網の延伸
(2)地方居住世帯のアクセシビリティの向上と,それによる貧 困の解消・QOLの向上
(3)国家安全保障,及び国力の向上
(4)水力発電力の向上と利用促進のための道路網連結性の 向上
(5)環境負荷の少ない施行技術の整備
(6)道路交通における信頼性,経済性,安全性,間便性,快適 性の向上
(7)道路建設・保守管理業における民間セクターの活性化
(8)道路計画・設計・モニタリング・品質管理・施工技術に関す る専門家の育成
また,具体的な達成目標としては,ブータン南部における東 西縦貫道の開通を念頭に,
(1)地方居住世帯の内,4時間以内の徒歩移動で道路交通に アクセスできる世帯の割合を85%以上とすること
(2)南部東西縦貫道プンツォリン-サムツェ間の道路建設及び 高規格化
(3)Lhamoizinkha-Dagana間の道路建設(75km)
(4)南北道Gyelpoizhing-Nanglam間(64.3km),及びGomphu- Pangbang間の道路建設(56km)
(5)水力発電所建設のためのアクセス道路の建設(28km)お よび高規格化(329km)
が挙げられている.

ブータン国内の道路種別延長の変遷
図―2 ブータン国内の道路種別延長の変遷 Statistical Yearbook of Bhutan 2005-2010に基づき, 筆者作成.2002年はデータ欠損.

2.4 都市間公共交通
ブータンには軌道系交通機関は存在せず,都市間移動を支 える公共交通手段はバスかタクシーに限られる. 1962年の道路開通の後,1964年に発足した国有企業であ るBhutan Government Transport Serviceが都市間旅客 輸送サービス,及び物資輸送サービスの提供を開始,その後 1985年から1991年にかけて民営化された.1991年当時で 21の事業者が存在,その後増加傾向にあり,アクセシビリティ の向上が図られている.全国でティンプー,プンツォリン,ゲレ プ,サムドゥプジョンカの4都市にバスターミナル(写真─4参照) が整備され,2011年12月14日現在での筆者計数によると全 国で125の路線注3)が運用されている.
また,貧困の削減に向けたアクセシビリティ向上策の一環 として,不採算路線への補助金提供も行われている.しかしな がら,ブータンの英字週刊新聞The Journalists紙は2011年 11月20日号にて“Where’s the transport?”と題する記事を 掲載し,王立ブータン大学のあるカンルンにおいて公共のバ スサービスが提供されていない現状を報じており5),さらなる バスサービス拡充の必要性が伺える.
バスサービスの提供されていない地域では,公共交通手段 はタクシーに限られる.タクシー料金はメーター制ではなく,基 本的には道路安全管理局( RSTA,Road Safety and Transport Authority)注4)によって定められた公定料金で運 行される.この料金は15ニュルタム/kmの対距離制となって おり,例えば首都ティンプーから171km離れたインド国境のプ ンツォリンまで料金は2,565ニュルタム(約4,104円)であるこ とが,道路安全管理局のウェブサイト(http://www.rsta.gov.bt/Header/fare.html)上に記載されている.なお,同区間を バスで移動する場合の料金は139ニュルタム(約222円)である.

ティンプー長距離バスターミナルの様子
写真―4 ティンプー長距離バスターミナルの様子 筆者撮影 バスのチケットは,奥に写る道路安全管理局のチケット カウンターで購入する.

2.5 ブータン国内航空線2011年12月17日操業開始
2011年12月17日,ブータン初の国内航空線の操業が開始 された.ブータン西部のパロ空港に加えて,ブータン中部のブ ムタン,及びブータン東部のタシガンに新空港が整備され, ブータン初の民間航空会社Tashi Air (通称Bhutan Airlines) と国有企業であるDruk Airの2社により定期運行される.こ れにより,パロ~ブムタン間が30分,パロ~タシガン間が45分 で結ばれ,道路交通不通時の代替交通手段としての機能の 他,中部・東部ブータンへの観光需要の増加,経済活動の活 性化などが期待されている.
しかしながら,地元メディアや市民はいささか冷ややかな視 線を送っている.これは,公表された航空運賃の高さに起因 する.ブータンの日刊英字新聞KUNSEL紙によると,パロ~ブ ムタン間の片道運賃がDruk Air で170USD,Bhutan Airlinesで250USD6)となる(表─1参照).この料金設定に対 し,英字週刊新聞The Journalists紙は2011年12月4日付け で,特にBhutan Airlines の航空運賃に対し“Who can afford to fly?”と題する記事を掲載し7),高額な料金設定へ の批判意見を述べると共に,今後の2社の競合による航空運 賃の値下げに期待を寄せている.
いずれにせよ,国内航空線の開業はブータンの都市間交通 に対して大きな影響を与えるのは必至であると考えられ,今 後の動向には注目を要する.

ブータン国内航空線の航空運賃
表―1 ブータン国内航空線の航空運賃
出典:KUENSEL紙(2011年12月5日号及び2011年12月8日)の記事に基づき,筆者作成


3 - 首都ティンプーにおける都市内交通の現状

3.1 ティンプー概観
ティンプーは1961年に旧都プナカから遷都されて以降, ブータンの政治・経済の中心地となっている.近年,地方から の人口流入が著しく,1992年には約30,000人であった人口は 2011年現在では約105,000人に迫りつつある8).それに伴い, 住宅不足の深刻化,コミュニティの希薄化などの問題が顕在化 しつつある.また,ティンプー郊外には多くの住宅の建設が進 められており(写真─5),都市圏の拡大により自動車交通需要 も増加の一途をたどっており(図─3参照),ティンプー中心部 での交通渋滞の発生,交通事故件数の増加,駐車場不足など の問題に直面している9)

住宅建設が進められるティンプー郊外
写真―5 住宅建設が進められるティンプー郊外 筆者撮影

登録事務所別の自動車登録台数の変遷
図―3 登録事務所別の自動車登録台数の変遷 Statistical Yearbook of Bhutan 2005-2010に基づき, 筆者作成.直接的に交通需要を表す統計は取得されてい ないが,自動車登録台数の近年の増加傾向からも交通需 要の増大は推し量れよう.

3.2 交通信号のない唯一の首都
ブータンには交通信号は一つもなく,基本的に交差点はす べてラウンドアバウト(円形交差点)の一種としての整備がなさ れている.かつては1992年にティンプー市内中心部に交通信 号が設置されたこともあるが,ティンプーの町並み・風情にそぐ わないこと,そして多くの運転手が交通信号のルールに不案内 であったため,信号無視をする車両が多かったことを理由に, 撤去されたとのことである注5).現在,信号機の設置されてい た交差点中央には交通警察官用のブースが設置され,混雑 時には警察官の手信号により交通を制御する光景がティンプーのランドマークとなっている(写真─6).なお,警察官によ る制御がなされてはいるものの,当該の交差点も基本的には ラウンドアバウトであるため,交通動線は図─4に示す通り,警 察官用のブースを中心に時計回りに周回注6)するようになって いる.ただし,南北に貫く道路(ノルジンラム通り),交差点か ら東へ抜ける道路共に一方通行に制限されている.これは交 差点部への流入アプローチを2方向に絞ることにより,交通処 理効率を上げ,混雑の解消を図ると共に,ティンプーの目抜き 通りであるノルジンラム通りに駐車スペースを確保することを 狙ったものと考えられる.しかしながら,現状でも,朝の通勤 時間帯,夕方の帰宅時間帯には過飽和状態にあることも多い. 今後の交通需要の増加を考えると,交通渋滞が悪化すること は必定である.交通信号によらない制御を維持するために は,中心部への流入交通需要を低下させるための対策を講じ る必要があると考えられる.

ティンプー中心部の交差点
写真―6 ティンプー中心部の交差点 筆者撮影

ティンプー市内交差点見取り図と交通動線
図―4 ティンプー市内交差点見取り図と交通動線

3.3 ティンプー市内の公共交通
都市内移動を対象とした公共交通は,市バスとタクシーが 利用可能である.上述の都市間バスは道路安全管理局の管 理下において民間業者により運行されているが,市バス事業 については,Thimphu City Corporationの管理下において ブータン郵便会社(Bhutan Postal Corporation LTD.)により 運営されている.ティンプー市内では全10路線が存在し,18 台のバスにより営業されている.路線図などの詳細はブータ ン郵便会社のウェブサイト上(http://www.bhutanpost.com.bt/index.php?id=71)で参照することができる. タクシーについては都市間での利用と同様,料金はメーター 制ではなく目的地毎に公定料金が設定されているが,実際に 利用する際にはドライバーとの交渉により料金が決定される という.流しのタクシーを利用することも可能であるが,タク シー乗り場から同目的地の乗客での相乗り利用をすることも 多い.タクシー乗り場には,行き先毎に看板が立てられており, 各方面へ向かう乗客同士が容易に相乗りできるようになって いる(写真─7).
一方,環境負荷の少ない公共交通サービスの樹立に向け た取り組みも進められており,近年では,Bhutan Urban Transport Systems ProjectがIFC(国際金融公社)の主導で立 ち上げられ,現在,BRT(Bus Rapid Transit)の導入可能性 が検討されている10). また,環境教育の文脈において,CO2排出・エネルギー消費 を加速する自動車利用を控え,賢いクルマの使い方や公共交 通・徒歩・自転車利用を推奨する内容がRoyal Society for Protection of Nature(王立自然保護協会)編の「気候変動と 健康マニュアル」11)に記載され,周知が進められている.
世界中の多くの都市で散見される,慢性的な渋滞や自動車 に占拠された中心市街地の光景を回避することができるか, 今後の取り組みに期待したい.

ブータン タクシー乗り場の様子
写真―7 タクシー乗り場の様子 筆者撮影
乗客を待つタクシードライバーがたむろす.各看板には 行き先が記されている.


4 - おわりに

先般,ブータン情報通信省はADBの援助を受け,「Bhutan Transport 2040」と題する交通に関する総合戦略ビジョンの 草案を作成,過日上梓した.
この中では,総合ビジョンとして「社会経済の発展に向け, 全国民に安全,安心,便利,経済的かつ環境負荷の少ない交 通システムを提供すること」と明確に規定された上で,(1)道路 ネットワーク,(2)民間航空事業,(3)都市間及び地方部公共交 通,(4)貨物輸送,(5)国際連携ネットワーク,(6)都市交通シス テム,(7)交通安全・事故対策,(8)交通規制・ドライバー教育, (9)交通関連部門の再編,の以上9つの項目について,ビジョ ン,目的,現状分析,達成目標,工程表,が掲載されている.
総合ビジョンに謳われている「社会経済の発展」は,「環境 保全」,「文化遺産の保存と促進」,「よい統治」と並び,ブータ ンのGNH政策の骨子をなすものである.しかしながら,しば しば社会経済の発展は,国民の生活様式を変革し,古き良き 大衆文化や自然環境を破壊する結果につながることも否定で きない.現に,ティンプーへの人口集中と農村の労働力不足, 及びそれによる農作地の荒廃といった現象は,その一つの顕 在化した例とも言える.
互いに相矛盾する理念をどのように調整し,どのような発展 を遂げるか.「幸せな国民注7)」は2040年においても同様に幸 せたり得るか.
国王の持つカリスマ性と仏教に根ざした価値観を持つブー タン国民を持ってすれば,この難問に対して有効な解を見出 すことが可能であるように思える.今後のブータンの取り組み・ 動向に刮目したい.

謝辞

本稿の執筆にあたり,JICAシニア海外ボランティアの河 合正吉氏には種々のデータを提供頂いた.また,関係省庁へ のヒアリング調査に当たっては,Karchun Wangchuk氏, Sonam Wangchuk氏にご尽力頂くと共に,京都大学ブータ ン友好プラグラム第7次訪問団各位(中嶋智之氏,山本真也 氏,Thupten Gawa氏,田和優子氏,岡部岳人氏)のご協力を 頂いた.ここに記して,謝意を表する.

注1)詳細についてはウェブサイト(http://www.kyoto-bhutan.org/)を参照されたい.
注2)筆者の訪問したガサ県にあるラヤという村は,自動車でアクセス可能なガ サ中心部から徒歩で2日を要する標高3,830mの山間部に位置する.約230世 帯,1,050人が生活するこの村では,ティンプー市内にて25ニュルタムで販売さ れている清涼飲料水が60ニュルタムで販売されている.商店主へのヒアリン グによると,商品は主にインド製で,4ヶ月に1度ほどの頻度で発注するという. 多くの住民が農業やヤク・馬の放牧,冬虫夏草の採集・販売により生計を立て ているこの村にも,2013年を目処に道路の延伸が計画されており,現在,環境 アセスメントが進められている.
注3)Public Transport Schedule (http://www.rsta.gov.bt/public_transport/public_ transport.html),及びRSTA Annual Report for the Finance Year 2010−2011の 新規路線に関する記述に基づいて計数した.
注4)RSTAはMinistry of Information and Communication(情報通信省)直下に属 する機関で,Registration & Licensing Division,Safety & Regulatory Division, Transport Development Division, Transport Management & Contract Administration Divisionの4部門により構成される.なお,ブータンのインフラ・ 道路建設については,Ministry of Works & Human Settlementに属する Department of Roadsの管轄になっている.そのため,交通事業に関して一元 的な計画・管理ができていないとの批判も散見される.
注5)筆者の推測の域を出ないが,1992年当時では交通需要も少なく,交差点が 飽和することも少なかったため,信号の意義を見いだせず信号無視をする車 両が多かったのではないかと考えられる.また,これも筆者の仮説に過ぎな いが,ラウンドアバウトのルールが周知されている理由は,ブータンの宗教上の 習慣とは無縁ではなさそうだ.すなわち,ブータン人には,マニ車を時計回りに 回転させる習慣,チョルテン(仏塔)を時計回りに周回する習慣,そして峠でのラ ツェ(積石塚)も時計回りに通行する習慣がある.そのため,交差点の中央に某 かのモニュメントがあれば,それに対して時計回りに周回するのが自然な振る 舞い方であり,ラウンドアバウトへの親和性が高いのではないだろうか.
注6)ブータンでは車両は左側通行である.
注7)2005年に行われた国勢調査では96.7%の国民が自分は「とても幸せ」,もし くは「幸せ」と回答したとされている12).しかしながら,このときの調査方法の 公正性に対する批判も少なくない.2011年12月現在,2010年度のGNH調査 の結果がCenter for Bhutan Study(国立ブータン研究所)のウェブサイト (http://www.grossnationalhappiness.com/)にて公開されている.この調査 では,幸福達成度を(1)心理的幸福感,(2)日常生活の時間配分,(3)地域活 力,(4)文化,(5)健康,(6)教育,(7)環境的多様性,(8)生活水準,(9)統治, の9領域で構成されるものと考え,それぞれを統合化して幸福度を指標化す るアプローチが採用されている.

参考文献

1)中尾佐助[1959],『秘境ブータン』,岩波書店.
2)Tenth Five Year Plan 2008-2013, Volume 1: Main Document, Gross National Happiness Commission, Royal Government of Bhutan, 2009.
3)JICAブータン事務所所長仁田知樹氏へのヒアリングに基づく(2011年12月6日).
4)Results of Population & Housing Census of Bhutan 2005, Office of the Census Commissioner, Royal Government Bhutan, 2006.
5)Where’s the transport? The Journalist Vol. 2, Issue 47(2011年11月20日刊).
6)Druk will charge less than Bhutan, KUENSEL(2011年12月8日刊).
7)Who can afford to fly? The Journalist Vol. 2, Issue 49(2011年12月4日刊).
8)Anticipating Thimphu in 2032, The Journalist Vol.2, Issue 47(2011年11月20 日刊).
9)Road Safety and Transport Authority Director, Tashi Norbu氏へのヒアリング に基づく(2011年12月6日).
10)RSTA Annual Report for the Finance Year 2010-2011, Transport Management Division, Road Safety and Transport Authority, 2011.
11)Bhutan Transport 2040 Integrated Strategic Vision Draft, Ministry of Information and Communication, 2011.
12)上田晶子[2011],“関係性,充足,バランス:国民総幸福量(GNH)の視点と実 践”,「科学」,Vol. 81,No. 6,pp. 540-545.


出典: 運輸政策研究 Vol.14 No.4, pp.43-48, 2012.